2015年、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者・山口敬之氏から性的暴行を受けたと訴えた事件。
刑事では不起訴となるも、民事裁判で「同意なき性行為」が認定された。
本記事では、伊藤詩織さんが“なにされた”のか、事件の全貌を時系列で解説します。
刑事では不起訴となるも、民事裁判で「同意なき性行為」が認定された。
本記事では、伊藤詩織さんが“なにされた”のか、事件の全貌を時系列で解説します。
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伊藤 詩織(いとう しおり、1989年5月17日 - )は、日本のフリージャーナリスト、映像作家。ジェンダー平等と人権問題を中心に活動。BBC、アルジャジーラ、エコノミストなど、主に日本国外のメディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信している。 映像ニュースやドキュメンタリーを制作する「HANASHI…
114キロバイト (14,561 語) - 2025年9月9日 (火) 02:29
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1. 伊藤詩織さんとは何者か
伊藤詩織(いとう・しおり)さんは1989年生まれのジャーナリスト。
報道・映像制作を学び、海外メディアでの活動を経て帰国。社会問題を取材する中で、2017年、自身の性暴力被害を実名・顔出しで告発し、日本社会に大きな衝撃を与えました。彼女が発表した著書『Black Box』(文藝春秋)は、被害の実態と司法の壁を赤裸々に記したドキュメントとして高く評価され、海外でも翻訳・報道が相次ぎました。
報道・映像制作を学び、海外メディアでの活動を経て帰国。社会問題を取材する中で、2017年、自身の性暴力被害を実名・顔出しで告発し、日本社会に大きな衝撃を与えました。彼女が発表した著書『Black Box』(文藝春秋)は、被害の実態と司法の壁を赤裸々に記したドキュメントとして高く評価され、海外でも翻訳・報道が相次ぎました。
2. 出会いと事件のきっかけ
時は2015年。
伊藤さんは当時、報道業界への就職を目指しており、TBSワシントン支局長だった山口敬之氏と知り合います。
山口氏は政治部の名物記者で、安倍晋三元首相の伝記を執筆するなど、政界とのパイプが太い人物として知られていました。彼から「取材の相談を兼ねて食事しよう」と誘われ、2015年4月3日、東京・恵比寿で会食することになります。
この食事会が、事件の発端となりました。
伊藤さんは当時、報道業界への就職を目指しており、TBSワシントン支局長だった山口敬之氏と知り合います。
山口氏は政治部の名物記者で、安倍晋三元首相の伝記を執筆するなど、政界とのパイプが太い人物として知られていました。彼から「取材の相談を兼ねて食事しよう」と誘われ、2015年4月3日、東京・恵比寿で会食することになります。
この食事会が、事件の発端となりました。
3. 宴席からホテルへ ― “なにされた”のか
伊藤さんの証言によれば、会食中に山口氏から次々と酒を勧められ、途中から意識が朦朧とし、記憶を失ったといいます。
その後、タクシーでどこかに連れて行かれ、目を覚ますとホテルのベッドの上だった――
その瞬間、彼女は裸の状態で横たわり、性的行為を受けた痕跡があったと述べています。これが、伊藤詩織さんが後に語った「なにをされたのか」の核心部分です。
つまり、同意のないまま性的行為を強要されたということでした。当時、ホテルの防犯カメラ映像には、山口氏が酩酊した伊藤さんを抱えるようにして連れ込む様子が映っており、のちの民事裁判でも重要な証拠として採用されています。
その後、タクシーでどこかに連れて行かれ、目を覚ますとホテルのベッドの上だった――
その瞬間、彼女は裸の状態で横たわり、性的行為を受けた痕跡があったと述べています。これが、伊藤詩織さんが後に語った「なにをされたのか」の核心部分です。
つまり、同意のないまま性的行為を強要されたということでした。当時、ホテルの防犯カメラ映像には、山口氏が酩酊した伊藤さんを抱えるようにして連れ込む様子が映っており、のちの民事裁判でも重要な証拠として採用されています。
4. 告訴と「逮捕取りやめ」の疑惑

事件の数日後、伊藤さんは警察に相談し、被害届を提出。
警視庁高輪署は山口氏を準強姦容疑で捜査し、逮捕令状を取得しました。ところが――
2015年6月8日、山口氏が成田空港に帰国した際、逮捕直前で“上層部の指示”により取りやめになったとされています。これにより捜査は大きく混乱、後に伊藤さんは記者会見で「なぜ逮捕が止められたのか」と強く疑問を呈しました。この出来事は「司法と権力の癒着疑惑」としても注目され、日本の報道自由度の問題に発展していきます。
警視庁高輪署は山口氏を準強姦容疑で捜査し、逮捕令状を取得しました。ところが――
2015年6月8日、山口氏が成田空港に帰国した際、逮捕直前で“上層部の指示”により取りやめになったとされています。これにより捜査は大きく混乱、後に伊藤さんは記者会見で「なぜ逮捕が止められたのか」と強く疑問を呈しました。この出来事は「司法と権力の癒着疑惑」としても注目され、日本の報道自由度の問題に発展していきます。
5. 検察の不起訴と民事訴訟の提起
警察の捜査を経て、東京地検は「嫌疑不十分」として不起訴処分に。
つまり、刑事事件としては立件されませんでした。伊藤さんはこの判断を受け、「性暴力被害者が声を上げられない日本の現状」を告発。
2017年5月、実名と顔を公表して記者会見を開きます。同年9月には民事訴訟を起こし、「同意なき性行為により深刻な精神的苦痛を受けた」として山口氏に損害賠償を求めました。
つまり、刑事事件としては立件されませんでした。伊藤さんはこの判断を受け、「性暴力被害者が声を上げられない日本の現状」を告発。
2017年5月、実名と顔を公表して記者会見を開きます。同年9月には民事訴訟を起こし、「同意なき性行為により深刻な精神的苦痛を受けた」として山口氏に損害賠償を求めました。
6. 東京地裁が認定した“同意なき行為”
2019年12月18日、東京地方裁判所が判決を下しました。
判決文では次のように記されています。
「被告は原告の同意を得ないまま性交渉に及び、原告に精神的苦痛を与えた」
裁判所は、防犯カメラ映像、医師の診断書、伊藤さんの証言の整合性などを総合的に判断し、山口氏の主張(合意の上だった)は「信用できない」と結論づけました。
結果、山口氏に約330万円の損害賠償命令が下され、伊藤さんの主張が事実上認められたのです。
一方で、山口氏が反訴していた「名誉毀損訴訟」は棄却されました。
7. 高裁・最高裁も伊藤さん勝訴で確定

山口氏は控訴しましたが、2022年1月25日の東京高裁も「同意のない性行為があった」と判断。
同年7月、最高裁が上告を退け、伊藤さんの勝訴が確定しました。つまり、日本の司法の最終判断として、
「伊藤詩織さんが山口敬之氏から同意なき性的行為を受けた」
という事実が法的に確定したことになります。
同年7月、最高裁が上告を退け、伊藤さんの勝訴が確定しました。つまり、日本の司法の最終判断として、
「伊藤詩織さんが山口敬之氏から同意なき性的行為を受けた」
という事実が法的に確定したことになります。
8. 裁判の意義
彼女は意識を失っている間に性的行為を受けたと訴え、その主張が裁判で認められました。
この裁判が特別だったのは、単なる「被害の有無」ではなく、日本社会における「同意の概念」「警察・検察の透明性」「メディアと権力の関係」を問い直す契機となった点にあります。
9. 伊藤詩織さんの現在と活動
事件後、伊藤さんは海外メディアでも発言を続け、BBCのドキュメンタリー番組『Japan’s Secret Shame』に出演。
日本国内では逆風や中傷にも晒されましたが、国際的には勇気ある告発者として高く評価されています。彼女はその後もロンドンを拠点に活動し、国連・海外大学で性暴力問題に関する講演を実施。
性教育、法改正、報道倫理など幅広いテーマで発信を続けています。
日本国内では逆風や中傷にも晒されましたが、国際的には勇気ある告発者として高く評価されています。彼女はその後もロンドンを拠点に活動し、国連・海外大学で性暴力問題に関する講演を実施。
性教育、法改正、報道倫理など幅広いテーマで発信を続けています。
10. 山口敬之氏の主張とその後

一方の山口敬之氏は、一貫して「合意の上だった」と主張しています。
しかし、民事判決の確定により、法的には“同意なき行為”が認定された状態です。事件後、山口氏は保守系メディアなどで執筆活動を続けていますが、テレビ出演は激減。
政治評論家としての影響力は限定的になりつつあります。
しかし、民事判決の確定により、法的には“同意なき行為”が認定された状態です。事件後、山口氏は保守系メディアなどで執筆活動を続けていますが、テレビ出演は激減。
政治評論家としての影響力は限定的になりつつあります。
11. 日本の#MeToo運動への影響
伊藤詩織さんの告発は、日本における#MeToo運動の象徴的存在となりました。
彼女の実名会見をきっかけに、多くの女性が被害を語り始め、企業・芸能界・大学などで性被害問題が表面化します。また、法務省は2023年、刑法の「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げ、「同意なき性交」をより明確に犯罪として扱う方向に改正。
これも伊藤さんの活動が世論を動かした結果といえます。
彼女の実名会見をきっかけに、多くの女性が被害を語り始め、企業・芸能界・大学などで性被害問題が表面化します。また、法務省は2023年、刑法の「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げ、「同意なき性交」をより明確に犯罪として扱う方向に改正。
これも伊藤さんの活動が世論を動かした結果といえます。
12. 伊藤詩織事件が残した課題
この事件は、被害者の勇気だけでなく、
「日本社会の構造的な問題」――たとえば警察・検察の判断基準、マスコミの沈黙、被害者バッシング――を浮き彫りにしました。被害者が声を上げても“社会的に二次被害”を受ける構図。
それを変えようと立ち上がった伊藤さんの行動は、今なお「沈黙を破った象徴」として記憶されています。
「日本社会の構造的な問題」――たとえば警察・検察の判断基準、マスコミの沈黙、被害者バッシング――を浮き彫りにしました。被害者が声を上げても“社会的に二次被害”を受ける構図。
それを変えようと立ち上がった伊藤さんの行動は、今なお「沈黙を破った象徴」として記憶されています。
まとめ:沈黙を破った勇気が、日本を動かした

「伊藤詩織 なにされた」という検索ワードに込められた関心は、単なるゴシップではなく、社会が向き合うべき現実です。
彼女が受けたことは、単に「性的暴行」だけではありません。
それは、権力・沈黙・偏見に満ちた社会そのものからの暴力でもありました。
それでも立ち上がった彼女の行動は、日本の司法・報道・人権意識に確かな一石を投じたのです。



